お待たせしました
『あいあいのらくがき』の管理人:愛さんと私(あき 紗香奈)のホワイトデーコラボです。
今回も愛さん→SS、イラスト→私
となっております
どうぞお楽しみくださいm(_ _)m
******************************************
勇気を出した後のご褒美のような1日。
この日、彼はどんな気持ちで私を想うのだろう。
【white day】
バレンタインから私と祐一先輩は付き合うことになった。
拓磨たちはとっても驚いた……というか、引いていたような顔をしていたけど、なんとなくチョコを渡した時に私の気持ちが分かったらしく、意外なほどに祝福してくれた。
とっても幸せなはずのこの状況で、祐一先輩は最近とても悩んでいるように思える。
そう、悩んでいるみたい。
みたいなんだけど………
「ゆ、祐一先輩?」
「どうした」
どうしたじゃないと思う。
先輩は最近、よく私に会いに来るようになった。
それも休み時間ごとに教室へと堂々と入り、隣の席に座りじーーーっと………ひたすらじっーーーーと私を見つめる。
卒業まで学校に来なくてもいいと思うのに、毎日登校してまでどうしたことだろう。
負けずに見つめ返そうと思うのだけれど、先輩への想いとか乙女心とか…なんだか全部見透かされそうで、ついつい目をそらしてしまう。
あぁ、先輩。そこの席の生徒が座れなくて困ってます。
「先輩!何か私に聞きたいこととかあるんですか?」
「……何故だ?」
「だ、だって先輩、休み時間ごとに私に会いに来ては何も話さず、そ…その私をみているじゃないですか」
「迷惑か」
「そ、そんなことないですよっ!!ただ、何でなのかな?と」
そう聞くと、祐一先輩は少し溜息を吐いた。
キ――――ン――――コ―――――ンカ――――ンコ――――ン。
チャイムがなると同時に先輩が席を立ち、去って行った。
はぁ~~~~っ。
私の溜息とともに、何故かクラス中のみんなも溜息を吐く。
「ね、ねぇ?春日さん」
クラスメイトの子が話しかけてきた。
「狐邑先輩と付き合っているの?」
その質問にゴクリと喉を鳴らした。
ど、どうしよう……ここで「はい」と言ったら、みんなどんな反応するのかな?
祐一先輩、すっごく人気あるからイジメられちゃう?
汗をダラダラと流しながらも、勇気を振り絞ってコクンと頷いてみた。
「わーーーーっ!やっぱりっ!!」
「いつからなの!?」
「狐邑先輩が彼氏って羨ましい!!」
「毎日ここへ通うだなんて愛されてるよね!!」
クラス中の生徒たちが押し寄せる!!
「え、え!?ちょっと待って!!」
「はいはい、みんなそこまで~!踊り子さんには手を触れないでくださいね~」
清乃ちゃんが間に入って救ってくれた。
ありがとう、清乃ちゃん!!
「恥ずかしがり屋の珠紀ちゃんに変わって、この清乃ちゃんがお答えしましょう!!珠紀ちゃんと狐邑先輩は運命のあっか~い糸で繋がっていたんですねぇ♪ なので、間もなく結婚!そして可愛らしい赤ちゃんを授かることでしょう!!」
やっぱり清乃ちゃん黙ってて。
担任の先生が教室に入ってくるなり解放されたけど、授業が終わるとみんなが寄ってきそうだったので、今日はほとんど休み時間は屋上に避難することになった。
そして放課後、祐一先輩とともに帰路する。
あ、歩きながらも視線を感じます先輩……。
じっと私を見つめる視線に耐えかね、とうとう足が止まった。
「祐一先輩っ!何か悩みがあるのなら、聞きます!!どうぞ言ってください」
「………。」
祐一先輩がじっと私を見る。ま、負けないっ!今日こそは負けないんだからっ。
引かない私を感じたのか、祐一先輩はとうとう観念して話しかけた。
「わからない」
「わからないって?何がですか?」
そう言うと、祐一先輩は急に私の腕をとり、引き寄せた。
「祐一先輩」
私の頭を愛おしそうになでる。
ドキドキと心臓が鳴りだす。
なでていた手がだんだんと私の頬を伝って、やがて唇の上に指をそえた。
「お前に何を送れば喜ぶのか」
送るって何をですか!?
顔に血がのぼった状態で一生懸命頭を巡らすと、ようやくあることに気がついた。
「あ!ホワイトデー」
祐一先輩はそうだ。と頷いた。
そっか、それで私が何を好きなのか観察していたんだ。
なんだかちょっと疲れがでた。
「私は何もいらないですよ」
「いらない?」
「はい、もう貰ってますから」
「俺が…か?」
にっこりと先輩を見て笑ってみる。
“祐一先輩っていうお返しを貰ってます。”
って、恥ずかしすぎて言えないけど…。
顔を赤くしながらも、一生懸命頷く。
あ……あれ?祐一先輩もの凄く悩んでる。
いつもよりも、深刻にじ――――――っと熱い視線を感じ、堪りかねた私は、提案を出した。
「じゃ、じゃぁ。祐一先輩を1日ください!!」
慌てて言ったセリフは自分でも驚く内容で…
当然自分自身口をパクパクさせながらも、アタフタしてしまう。
「じゃ、なくって…その、あのっ!!」
「………わかった」「え!?何が分かったんですかっ!!」
祐一先輩は美しいまでの笑みを浮かべなから、私の手をとり家へと送ってくれました。
☆
――――― ホワイトデー当日 ―――――
この日は休日で、家にいます。
前日祐一先輩に家で待っていろと言われ、待っています。
ど、どうしよう!!そわそわしてきた。
「どうされたのです?」
美鶴ちゃんが私の落ちつきの無さに、質問してきた。
そうだ、美鶴ちゃんに心の内を話せばいくらか落ちつくかも。
………っと思って話したのが失敗だったと、この時私は思わなかった。
「何故もっと早くに言ってくださらないのですかっ!!」
「え?美鶴ちゃん?」
「こうしちゃいられません!色々と準備を……っ!!」
そういうと、美鶴ちゃんが何人もいるような早さで家の中をアレコレし始めた。
「み、美鶴ちゃん…」
私は一体何を彼女に言っちゃったのだろう…。
一通り彼女がやり終えた後、タイミングよく祐一先輩がやってきた。
「いらっしゃいませ。」
「先輩、こんにちは。」
二人で先輩を迎える。
「あぁ、あがるぞ」
「はい。これからはここを我が家と思ってお寛ぎください。」
ん?我が家?
ちょっと頭をかしげたけど、あまり気にせずに居間へと向かった。
心配ごともどことやら、ほどなく先輩と時間を過ごすと、あっという間に夕方になってしまった。
「狐邑さま、本日はこちらでお泊まりください」
「え?…美鶴ちゃんなんで?」
「いえ。今日は狐邑家でなにやら御用事があるらしく、誰もいらっしゃらないとのご連絡がありました。それならばこちらでお世話させてくださいと、お伝えいたしました。」
そういうと、夕飯のご用意をしますと席をたった。
あ…怪しい。なんだか美鶴ちゃんが怪しいと思うのは私だけだろうか?
なんで、顔を赤くしたまま目をそらして言ったのか……。
「ゆ、祐一先輩!家に確認した方がいいです。」
「……俺は別にかまわないが」
かまわないって………。
しばらく顔を赤くしたまま固まっていると、美鶴ちゃんが料理を出してくれた。
「……美鶴ちゃん。これ何?」
「すっぽん料理です。珍しいですし、おいしいですよ」
祐一先輩と私はじっとその料理を見つめる。
なんで「すっぽん」なのっ!?
「ご、ごめん。美鶴ちゃん……普通の料理がいいです」
祐一先輩も頷いた。
「チッ」
美鶴ちゃんは料理を下げてながらも台所へ。
「チッ」って言った……。
台所方面を見つめながら、とても嫌な予感がしてくる。気になったので、台所をそっとのぞくと何やら美鶴ちゃんが料理の中に薬を盛っている。
ガラッ!!
「美鶴ちゃんっ!そこまでです!」
「珠紀さまっ!?」
「そ、その粉は何?」
「ご心配なさらないでください。これは殿方が精のつく薬です。」
「つかなくていいからっ!!」
「何を言うのです?せっかくのこのチャンス、逃す手はありませんっ!!」
「美鶴ちゃんは私たちにどうしてほしいのっ!?」
そう聞くと、両頬に手をあてがいながらも顔を赤く染めた。
「は、早く可愛いおややを………玉依の血筋の安泰を…」
「美鶴ちゃんっ!!」
美鶴ちゃんの暴走をなんとか抑えながらも、無事食事を終えることができたのは奇跡だったと言っていいと後で思った。
☆
あれから何事もなくお風呂を済ませ、先輩とは勿論別々の部屋で眠る体制になれた。
なんだかホワイトデーとは言えないような一日だったけど、今もこの家に先輩がいてくれるという安心と喜びで胸がいっぱいになり、なかなか寝付けない。
しばらくすると、誰かがこちらへ向かってくる足音がする。
ギシ…ギシ……
誰だろう?美鶴ちゃんかな。
そう思っていると、そっと扉が開き誰かが入ってきた。
「美鶴ちゃん?どうしたの?」
顔を確かめようと手を伸ばしながらも近寄ると、ガシっと手を掴まれ押し倒された。
「え?……んっ」
私の唇を唇でふさがれる。
ビックリして少し暴れると声がした。
「俺だ」
「ゆ、祐一先輩っ!?」
布団の上に先輩に押し倒されているこの状況に、頭がついていかない。
「せ、先輩なんで!!」
「お前が俺を欲しいと言った」
い、いつ言ったっ!?目がグルグルしながらも必死になって思い出す。
「あ!もしかして“先輩を一日ください”と言ったことですか!?」
そうだと頷いてる…。
あ、あ、あ、あ、あれをこうとったかっ!!
全身汗だくになるっ。
固まる私の首に顔を埋めてくる……。
きゃーーーーっいけませんっ!!
「せ、せ、せ、先輩っ!!違いますっ。その意味じゃありません!!」
先輩が顔をあげた。
「わ、私が言ったのは、先輩との時間が欲しかったという意味ですよ」
今度は先輩が固まる番だった。
「………こういうのは嫌か?」
「そうじゃありません……ただ、今は心の準備が出来てないんです」
ドキドキしすぎて目を開けてられない。
しばらくすると深い溜息が聞こえた。そっと目を開けると、私の頬に手を置きながらも先輩の切なそうな顔が見えた。
「それなら俺はお前に何をしてあげればいい?」
「先輩?」
「お前からチョコを渡されたあの日、色々なものを貰った。
お前の手作り
お前の心
お前のそばにいられる権利
そしてお前自身だ」
じっと私をみるその切ない目からそらせない。
「俺はお前に何も渡していない」
首を横に振る。
「先輩から沢山もらいましたよ?
あの日に私も先輩から“心”や“そばにいられる権利”や“先輩自身”を」
今度は先輩が首を横に振る。
「足りない…お前から貰ったものとは釣り合わない」
納得いかない先輩をどうなだめようかと、目を泳がせると机の上の赤いリボンに目が止まった。
刺繍か何かに使おうと買っておいた赤いリボン。
「それじゃ…先輩?私のわがままに一つ付き合ってください」
リボンを手に取ると先輩の小指と私の小指に結びつける。
「赤い糸って信じますか?目に見えない糸です。でもこうすると目に見えます、幸せな気分になれます。
今日はこれをつけたまま一緒に寝てください。それをプレゼントにしてくれますか?」
ちょっと、馬鹿げていると自分でも思う。
必死で思いついた私の恥ずかしい我儘。
こんな時じゃなきゃ言えない。
祐一先輩は二コリと笑いながら私のおでこにキスを落とし、一緒に眠りに着いた。
夢の中でも、いつまでも覚めたくないような、キャンディみたいに甘い甘い幸せが私を包んだ。
Fin
『あいあいのらくがき』の管理人:愛さんと私(あき 紗香奈)のホワイトデーコラボです。
今回も愛さん→SS、イラスト→私
となっております
どうぞお楽しみくださいm(_ _)m
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勇気を出した後のご褒美のような1日。
この日、彼はどんな気持ちで私を想うのだろう。
【white day】
バレンタインから私と祐一先輩は付き合うことになった。
拓磨たちはとっても驚いた……というか、引いていたような顔をしていたけど、なんとなくチョコを渡した時に私の気持ちが分かったらしく、意外なほどに祝福してくれた。
とっても幸せなはずのこの状況で、祐一先輩は最近とても悩んでいるように思える。
そう、悩んでいるみたい。
みたいなんだけど………
「ゆ、祐一先輩?」
「どうした」
どうしたじゃないと思う。
先輩は最近、よく私に会いに来るようになった。
それも休み時間ごとに教室へと堂々と入り、隣の席に座りじーーーっと………ひたすらじっーーーーと私を見つめる。
卒業まで学校に来なくてもいいと思うのに、毎日登校してまでどうしたことだろう。
負けずに見つめ返そうと思うのだけれど、先輩への想いとか乙女心とか…なんだか全部見透かされそうで、ついつい目をそらしてしまう。
あぁ、先輩。そこの席の生徒が座れなくて困ってます。
「先輩!何か私に聞きたいこととかあるんですか?」
「……何故だ?」
「だ、だって先輩、休み時間ごとに私に会いに来ては何も話さず、そ…その私をみているじゃないですか」
「迷惑か」
「そ、そんなことないですよっ!!ただ、何でなのかな?と」
そう聞くと、祐一先輩は少し溜息を吐いた。
キ――――ン――――コ―――――ンカ――――ンコ――――ン。
チャイムがなると同時に先輩が席を立ち、去って行った。
はぁ~~~~っ。
私の溜息とともに、何故かクラス中のみんなも溜息を吐く。
「ね、ねぇ?春日さん」
クラスメイトの子が話しかけてきた。
「狐邑先輩と付き合っているの?」
その質問にゴクリと喉を鳴らした。
ど、どうしよう……ここで「はい」と言ったら、みんなどんな反応するのかな?
祐一先輩、すっごく人気あるからイジメられちゃう?
汗をダラダラと流しながらも、勇気を振り絞ってコクンと頷いてみた。
「わーーーーっ!やっぱりっ!!」
「いつからなの!?」
「狐邑先輩が彼氏って羨ましい!!」
「毎日ここへ通うだなんて愛されてるよね!!」
クラス中の生徒たちが押し寄せる!!
「え、え!?ちょっと待って!!」
「はいはい、みんなそこまで~!踊り子さんには手を触れないでくださいね~」
清乃ちゃんが間に入って救ってくれた。
ありがとう、清乃ちゃん!!
「恥ずかしがり屋の珠紀ちゃんに変わって、この清乃ちゃんがお答えしましょう!!珠紀ちゃんと狐邑先輩は運命のあっか~い糸で繋がっていたんですねぇ♪ なので、間もなく結婚!そして可愛らしい赤ちゃんを授かることでしょう!!」
やっぱり清乃ちゃん黙ってて。
担任の先生が教室に入ってくるなり解放されたけど、授業が終わるとみんなが寄ってきそうだったので、今日はほとんど休み時間は屋上に避難することになった。
そして放課後、祐一先輩とともに帰路する。
あ、歩きながらも視線を感じます先輩……。
じっと私を見つめる視線に耐えかね、とうとう足が止まった。
「祐一先輩っ!何か悩みがあるのなら、聞きます!!どうぞ言ってください」
「………。」
祐一先輩がじっと私を見る。ま、負けないっ!今日こそは負けないんだからっ。
引かない私を感じたのか、祐一先輩はとうとう観念して話しかけた。
「わからない」
「わからないって?何がですか?」
そう言うと、祐一先輩は急に私の腕をとり、引き寄せた。
「祐一先輩」
私の頭を愛おしそうになでる。
ドキドキと心臓が鳴りだす。
なでていた手がだんだんと私の頬を伝って、やがて唇の上に指をそえた。
「お前に何を送れば喜ぶのか」
送るって何をですか!?
顔に血がのぼった状態で一生懸命頭を巡らすと、ようやくあることに気がついた。
「あ!ホワイトデー」
祐一先輩はそうだ。と頷いた。
そっか、それで私が何を好きなのか観察していたんだ。
なんだかちょっと疲れがでた。
「私は何もいらないですよ」
「いらない?」
「はい、もう貰ってますから」
「俺が…か?」
にっこりと先輩を見て笑ってみる。
“祐一先輩っていうお返しを貰ってます。”
って、恥ずかしすぎて言えないけど…。
顔を赤くしながらも、一生懸命頷く。
あ……あれ?祐一先輩もの凄く悩んでる。
いつもよりも、深刻にじ――――――っと熱い視線を感じ、堪りかねた私は、提案を出した。
「じゃ、じゃぁ。祐一先輩を1日ください!!」
慌てて言ったセリフは自分でも驚く内容で…
当然自分自身口をパクパクさせながらも、アタフタしてしまう。
「じゃ、なくって…その、あのっ!!」
「………わかった」「え!?何が分かったんですかっ!!」
祐一先輩は美しいまでの笑みを浮かべなから、私の手をとり家へと送ってくれました。
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――――― ホワイトデー当日 ―――――
この日は休日で、家にいます。
前日祐一先輩に家で待っていろと言われ、待っています。
ど、どうしよう!!そわそわしてきた。
「どうされたのです?」
美鶴ちゃんが私の落ちつきの無さに、質問してきた。
そうだ、美鶴ちゃんに心の内を話せばいくらか落ちつくかも。
………っと思って話したのが失敗だったと、この時私は思わなかった。
「何故もっと早くに言ってくださらないのですかっ!!」
「え?美鶴ちゃん?」
「こうしちゃいられません!色々と準備を……っ!!」
そういうと、美鶴ちゃんが何人もいるような早さで家の中をアレコレし始めた。
「み、美鶴ちゃん…」
私は一体何を彼女に言っちゃったのだろう…。
一通り彼女がやり終えた後、タイミングよく祐一先輩がやってきた。
「いらっしゃいませ。」
「先輩、こんにちは。」
二人で先輩を迎える。
「あぁ、あがるぞ」
「はい。これからはここを我が家と思ってお寛ぎください。」
ん?我が家?
ちょっと頭をかしげたけど、あまり気にせずに居間へと向かった。
心配ごともどことやら、ほどなく先輩と時間を過ごすと、あっという間に夕方になってしまった。
「狐邑さま、本日はこちらでお泊まりください」
「え?…美鶴ちゃんなんで?」
「いえ。今日は狐邑家でなにやら御用事があるらしく、誰もいらっしゃらないとのご連絡がありました。それならばこちらでお世話させてくださいと、お伝えいたしました。」
そういうと、夕飯のご用意をしますと席をたった。
あ…怪しい。なんだか美鶴ちゃんが怪しいと思うのは私だけだろうか?
なんで、顔を赤くしたまま目をそらして言ったのか……。
「ゆ、祐一先輩!家に確認した方がいいです。」
「……俺は別にかまわないが」
かまわないって………。
しばらく顔を赤くしたまま固まっていると、美鶴ちゃんが料理を出してくれた。
「……美鶴ちゃん。これ何?」
「すっぽん料理です。珍しいですし、おいしいですよ」
祐一先輩と私はじっとその料理を見つめる。
なんで「すっぽん」なのっ!?
「ご、ごめん。美鶴ちゃん……普通の料理がいいです」
祐一先輩も頷いた。
「チッ」
美鶴ちゃんは料理を下げてながらも台所へ。
「チッ」って言った……。
台所方面を見つめながら、とても嫌な予感がしてくる。気になったので、台所をそっとのぞくと何やら美鶴ちゃんが料理の中に薬を盛っている。
ガラッ!!
「美鶴ちゃんっ!そこまでです!」
「珠紀さまっ!?」
「そ、その粉は何?」
「ご心配なさらないでください。これは殿方が精のつく薬です。」
「つかなくていいからっ!!」
「何を言うのです?せっかくのこのチャンス、逃す手はありませんっ!!」
「美鶴ちゃんは私たちにどうしてほしいのっ!?」
そう聞くと、両頬に手をあてがいながらも顔を赤く染めた。
「は、早く可愛いおややを………玉依の血筋の安泰を…」
「美鶴ちゃんっ!!」
美鶴ちゃんの暴走をなんとか抑えながらも、無事食事を終えることができたのは奇跡だったと言っていいと後で思った。
☆
あれから何事もなくお風呂を済ませ、先輩とは勿論別々の部屋で眠る体制になれた。
なんだかホワイトデーとは言えないような一日だったけど、今もこの家に先輩がいてくれるという安心と喜びで胸がいっぱいになり、なかなか寝付けない。
しばらくすると、誰かがこちらへ向かってくる足音がする。
ギシ…ギシ……
誰だろう?美鶴ちゃんかな。
そう思っていると、そっと扉が開き誰かが入ってきた。
「美鶴ちゃん?どうしたの?」
顔を確かめようと手を伸ばしながらも近寄ると、ガシっと手を掴まれ押し倒された。
「え?……んっ」
私の唇を唇でふさがれる。
ビックリして少し暴れると声がした。
「俺だ」
「ゆ、祐一先輩っ!?」
布団の上に先輩に押し倒されているこの状況に、頭がついていかない。
「せ、先輩なんで!!」
「お前が俺を欲しいと言った」
い、いつ言ったっ!?目がグルグルしながらも必死になって思い出す。
「あ!もしかして“先輩を一日ください”と言ったことですか!?」
そうだと頷いてる…。
あ、あ、あ、あ、あれをこうとったかっ!!
全身汗だくになるっ。
固まる私の首に顔を埋めてくる……。
きゃーーーーっいけませんっ!!
「せ、せ、せ、先輩っ!!違いますっ。その意味じゃありません!!」
先輩が顔をあげた。
「わ、私が言ったのは、先輩との時間が欲しかったという意味ですよ」
今度は先輩が固まる番だった。
「………こういうのは嫌か?」
「そうじゃありません……ただ、今は心の準備が出来てないんです」
ドキドキしすぎて目を開けてられない。
しばらくすると深い溜息が聞こえた。そっと目を開けると、私の頬に手を置きながらも先輩の切なそうな顔が見えた。
「それなら俺はお前に何をしてあげればいい?」
「先輩?」
「お前からチョコを渡されたあの日、色々なものを貰った。
お前の手作り
お前の心
お前のそばにいられる権利
そしてお前自身だ」
じっと私をみるその切ない目からそらせない。
「俺はお前に何も渡していない」
首を横に振る。
「先輩から沢山もらいましたよ?
あの日に私も先輩から“心”や“そばにいられる権利”や“先輩自身”を」
今度は先輩が首を横に振る。
「足りない…お前から貰ったものとは釣り合わない」
納得いかない先輩をどうなだめようかと、目を泳がせると机の上の赤いリボンに目が止まった。
刺繍か何かに使おうと買っておいた赤いリボン。
「それじゃ…先輩?私のわがままに一つ付き合ってください」
リボンを手に取ると先輩の小指と私の小指に結びつける。
「赤い糸って信じますか?目に見えない糸です。でもこうすると目に見えます、幸せな気分になれます。
今日はこれをつけたまま一緒に寝てください。それをプレゼントにしてくれますか?」
ちょっと、馬鹿げていると自分でも思う。
必死で思いついた私の恥ずかしい我儘。
こんな時じゃなきゃ言えない。
祐一先輩は二コリと笑いながら私のおでこにキスを落とし、一緒に眠りに着いた。
夢の中でも、いつまでも覚めたくないような、キャンディみたいに甘い甘い幸せが私を包んだ。
Fin
年に一度、乙女が堂々と告白できる、この日。
私はある決意を胸に、夜中から頑張ってチョコをつくる。
【Valentine】
キ―――ンコ―――ンカ――――ンコ――――ン。
お昼のチャイムが鳴ると、クラスの女子が一斉に教室から出る。
あっという間に教室には、私と清乃ちゃんの2名だけになってしまった。
「………みんな、慌ててどこにいったのかな?」
わたしのつぶやきに、唖然とした顔で私をみる清乃ちゃん。
「珠紀ちゃん……みんな乙女の戦いにいったんだと思うよ?」
「乙女の戦い?」
聞き返す私の肩に、清乃ちゃんの手が掴む。
「今日は何の日だか……覚えてる?」
大丈夫なの?と心底心配する顔で見つめられた。
「えっと……。今日が何の日だかは、ちゃんと気付いているよ?
ただ、こんな競争みたいな形でクラス中の女子が一斉にいなくなる現象とは、なかなか結びつかなかっただけで…。
……って、え?みんな、じゃぁ渡しにいったの?」
「んーーーー、たぶん私の予想では、狐邑先輩と犬戒くんあたりに集中しているんじゃないかな?って思うのよ」
サ――――――ッっと血の気が引いた。
「ゆ、祐一先輩ってやっぱりそんなに人気あるの?」
「………宗教ができそうなくらいにね」
や、やばい。私の中で焦りが生じる。
ふと、今日持ってきた手作りのチョコが入った紙袋に目を落とした。
「珠紀ちゃん!何ぼーーっとしてるの?恋愛は戦いよ!!早くいって」
清乃ちゃんのかけ声に、弾かれるようにチョコを持ったまま教室を出た。
学校中をあちこち探すけど、祐一先輩はおろか真弘先輩も拓磨も誰も見つけられない。
みんなどこへ行ったんだろう。
廊下をすれ違う女の子の話声が聞こえてきた。
「あーーーーん。また今年も狐邑先輩いないっ!」
「本当にいつもどこにいるのかしら」
毎年、この日はみんなどこかに隠れちゃうらしい。
廊下で立ち止まった。せっかく勇気を出して祐一先輩に作ったこのチョコレート。、
先輩だけじゃない、他のみんなにもいつもの感謝をこめてチョコを作ってある。
でも、頑張って作っても手渡せないのなら意味が無い。
それに今年、祐一先輩は卒業してしまう。
いつでも会えるとは思っていても、毎日は会えなくなるこの寂しさ。
なんだか、もう先輩とはこれで縁が切れちゃうんじゃないか、という考えまでよぎりだした。
結局、お昼休みは誰ひとりと会えなかった。
☆
放課後のチャイムがなった。
帰り支度をして、ふと教室を見るといつの間にか拓磨がいなくなっていた。
今日はみんなと一言もしゃべってない。
なんだか仲間はずれにされている気分にもなってくる。
ぼーーっとしたまま校庭から窓を見つめると、下校している生徒たちが見えた。
その中に祐一先輩がいないか、自然と探してしまう。
「たそがれているキ~ミ!どうしたのかな?」
清乃ちゃんが声をかけてきた。
なんでもないよ?と声をかけると、カバンに手をかけるその手を清乃ちゃんが掴んだ。
「駄目だよ!まだ渡せてないんでしょ?みんなならまだ帰っていないんじゃないのかな?」
「どうして分かるの?」「実はこっそり屋上に登って行くところを見たのよ!」
「みんなが?」
ほらほら行っておいで、と私にチョコの入った紙袋を持たせると、私の背をそっと押しだした。
教室の入り口で立ち止まる。
「清乃ちゃん、受け取ってもらえなかったらどうしよう」
今日は誰ひとりとして私に声をかけてくれなかった。
もしかすると、みんなこういう行事が嫌でしてもらいたくないのかもしれない。
私からも……。
少し情けない顔で清乃ちゃんを見ると、彼女はとびっきりの笑顔で答えた。
「やってみなけりゃ分からないじゃない?
珠紀ちゃんからのプレゼントを受け取らないっていうのは想像つかないけど、もしそうなったら私が食べてあげる!!」
ぐっと親指を立てていってらっしゃい、する彼女に笑みがこぼれた。
ありがとう、清乃ちゃん。
足取りが少し軽くなり、屋上へと向かう。
扉の前に立つと、ドアノブを握りながら少し考える。
今日は告白するのはやめよう。
受け取ってくれるだけで満足だ。
うん、と少し心の足かせを外し、ドアノブを回した。
そこには、今日会えなかったみんながいた。
一斉に私をみる。
「………みんな集まってどうしたの?」
胸がドキドキいってる、顔が赤くならないように必死でゆっくりと呼吸をする。
「そりゃお前、生徒のみんなが帰るまでここで待機してんだよ」
真弘先輩が言う。
先輩が拒否するって意外です。
「今帰るとだな、家で待ち構えているやつとかいるんだよ」
拓磨が言う。
拓磨って意外ともてたんだ。
「僕、断りきれませんでした」
数々のチョコが見える紙袋を両手で抱えている慎司くん。
大変だね、慎司くん。
「女ってめんどくせぇ」
遼が言う。
度胸の据わった女性もいるもんだ。
みんなの意見にだんだんとチョコが渡せなくなってくる。
「あぁ、正直困る」
祐一先輩の駄目押し。
駄目だ、渡せない。
自然とドアのほうに下がってしまった。
「え……っと、そうなんだ。じゃぁ、私一人で帰るから…」
そう言うと、ドアノブに手をかけた。
ごめん、清乃ちゃん一緒にチョコ食べて、と心の中でつぶやく。
「ちょっと待て」
真弘先輩の声に振り向いた。
みんななんだか片手を前に出している?
「何ですか?」
「いや、お前からは何もないのかと思ってだな……」
拓磨が顔を赤くしながら言う。
「なんかこ~一つくらい甘いもんがくいて~な~なんてよ」
真弘先輩がいう。
「あの、珠紀先輩から戴けるのでしたら、僕一生大切にします」
慎司くんがいう。
「オイッさっさと出せ。お前からチョコの匂いがしてんだよ」
遼ったら。
「珠紀、……欲しい」
祐一先輩からのその一言で、一気に顔が赤くなる。
どんな顔をすればいいのか分からないまま、みんなに恐る恐る渡していく、祐一先輩のみ内緒のチョコレートとともに。
「よーーっし、さっそく戴くとするか!」
真弘先輩が包装を破り始めると、一斉にみんなまで破り始めた。
「え?え、え…………えーーーーーーーーっ!!」
軽くパニックになる!
だって、だって、みんなのチョコと祐一先輩のチョコは違うんだもの!
みんなも気がついたのか、一斉に祐一先輩の手に持つチョコに目がいった。
「なぁ?どうして祐一のだけハート型なんだ?」
そう、みんなのチョコは丸い型で、祐一先輩のチョコのみハート型。
だ、だって本命チョコだもん。みんなの視線が私に移る。
「う゛っ。」
視線に耐えきれなくなり、慌てて嘘をついた。
「ゆ、祐一先輩おめでとうございます!!当たりです」
「「「「「当たりぃ~」」」」」
目線を合わせられないまま、何度もうなずいた。
「そ、そういうのって面白いでしょ?」
納得いかないという視線が私をさす。
少し汗だくになりながらも、チョコを渡す目的を果たした私は、後ずさりをしながらバイバイっと手を振って屋上から逃げ出した。
な、なんとか誤魔化せたかな?
まだ熱い顔を手でパタパタと仰ぎながらも階段を下りる。
最後の階段を降りようとした時、一向に地に足がつかないことに気がついた。
―― 誰かに抱きかかえられている。
―― 恐る恐る振り返ると、それは祐一先輩だった。
「祐一先輩?」
確認すると、そっとおろしてもらった。
でも、離してはくれない
「珠紀………まだ当たったものを貰っていない」
さっきのチョコの件でのことを思い出し、顔が赤くなる。
「あ…当たりの商品ですか?」
そうだと頷かれる。突然の思い付きでいったあのセリフ。
当然そんなものは考えてはいなかった。
「あの、先輩は何がいいですか?」
私のセリフに少し驚く。
「俺が決めてもいいのか?」
赤い顔を見られないように、下を向きながら何度もうなずいた。
しばらく沈黙が訪れる。
その静寂な時間がとても長く感じ、また自分の心臓の音が先輩に聞こえないかと、少し焦った。
「珠紀」
先輩の声に顔をあげると、唇が落ちてきた。
何がなんだか分からず頭が真っ白になる。
やさしい口づけが、だんだんと熱く深くなって………やがて、私の中で甘さが広がった。
先輩が甘いのか。
私が甘いのか。
二人が一つに溶け合う。
☆
しばらくしてやっと唇を解放されると、私の耳元で囁いた。
―― 珠紀が欲しい ――
そう言うと、私の髪をやさしくなでおろし、愛おしそうに頬すりをする。
嬉しさと恥ずかしさと幸せで、涙が出た。
先輩を抱きしめることで、自分の気持ちを伝えた。
fin
私はある決意を胸に、夜中から頑張ってチョコをつくる。
【Valentine】
キ―――ンコ―――ンカ――――ンコ――――ン。
お昼のチャイムが鳴ると、クラスの女子が一斉に教室から出る。
あっという間に教室には、私と清乃ちゃんの2名だけになってしまった。
「………みんな、慌ててどこにいったのかな?」
わたしのつぶやきに、唖然とした顔で私をみる清乃ちゃん。
「珠紀ちゃん……みんな乙女の戦いにいったんだと思うよ?」
「乙女の戦い?」
聞き返す私の肩に、清乃ちゃんの手が掴む。
「今日は何の日だか……覚えてる?」
大丈夫なの?と心底心配する顔で見つめられた。
「えっと……。今日が何の日だかは、ちゃんと気付いているよ?
ただ、こんな競争みたいな形でクラス中の女子が一斉にいなくなる現象とは、なかなか結びつかなかっただけで…。
……って、え?みんな、じゃぁ渡しにいったの?」
「んーーーー、たぶん私の予想では、狐邑先輩と犬戒くんあたりに集中しているんじゃないかな?って思うのよ」
サ――――――ッっと血の気が引いた。
「ゆ、祐一先輩ってやっぱりそんなに人気あるの?」
「………宗教ができそうなくらいにね」
や、やばい。私の中で焦りが生じる。
ふと、今日持ってきた手作りのチョコが入った紙袋に目を落とした。
「珠紀ちゃん!何ぼーーっとしてるの?恋愛は戦いよ!!早くいって」
清乃ちゃんのかけ声に、弾かれるようにチョコを持ったまま教室を出た。
学校中をあちこち探すけど、祐一先輩はおろか真弘先輩も拓磨も誰も見つけられない。
みんなどこへ行ったんだろう。
廊下をすれ違う女の子の話声が聞こえてきた。
「あーーーーん。また今年も狐邑先輩いないっ!」
「本当にいつもどこにいるのかしら」
毎年、この日はみんなどこかに隠れちゃうらしい。
廊下で立ち止まった。せっかく勇気を出して祐一先輩に作ったこのチョコレート。、
先輩だけじゃない、他のみんなにもいつもの感謝をこめてチョコを作ってある。
でも、頑張って作っても手渡せないのなら意味が無い。
それに今年、祐一先輩は卒業してしまう。
いつでも会えるとは思っていても、毎日は会えなくなるこの寂しさ。
なんだか、もう先輩とはこれで縁が切れちゃうんじゃないか、という考えまでよぎりだした。
結局、お昼休みは誰ひとりと会えなかった。
☆
放課後のチャイムがなった。
帰り支度をして、ふと教室を見るといつの間にか拓磨がいなくなっていた。
今日はみんなと一言もしゃべってない。
なんだか仲間はずれにされている気分にもなってくる。
ぼーーっとしたまま校庭から窓を見つめると、下校している生徒たちが見えた。
その中に祐一先輩がいないか、自然と探してしまう。
「たそがれているキ~ミ!どうしたのかな?」
清乃ちゃんが声をかけてきた。
なんでもないよ?と声をかけると、カバンに手をかけるその手を清乃ちゃんが掴んだ。
「駄目だよ!まだ渡せてないんでしょ?みんなならまだ帰っていないんじゃないのかな?」
「どうして分かるの?」「実はこっそり屋上に登って行くところを見たのよ!」
「みんなが?」
ほらほら行っておいで、と私にチョコの入った紙袋を持たせると、私の背をそっと押しだした。
教室の入り口で立ち止まる。
「清乃ちゃん、受け取ってもらえなかったらどうしよう」
今日は誰ひとりとして私に声をかけてくれなかった。
もしかすると、みんなこういう行事が嫌でしてもらいたくないのかもしれない。
私からも……。
少し情けない顔で清乃ちゃんを見ると、彼女はとびっきりの笑顔で答えた。
「やってみなけりゃ分からないじゃない?
珠紀ちゃんからのプレゼントを受け取らないっていうのは想像つかないけど、もしそうなったら私が食べてあげる!!」
ぐっと親指を立てていってらっしゃい、する彼女に笑みがこぼれた。
ありがとう、清乃ちゃん。
足取りが少し軽くなり、屋上へと向かう。
扉の前に立つと、ドアノブを握りながら少し考える。
今日は告白するのはやめよう。
受け取ってくれるだけで満足だ。
うん、と少し心の足かせを外し、ドアノブを回した。
そこには、今日会えなかったみんながいた。
一斉に私をみる。
「………みんな集まってどうしたの?」
胸がドキドキいってる、顔が赤くならないように必死でゆっくりと呼吸をする。
「そりゃお前、生徒のみんなが帰るまでここで待機してんだよ」
真弘先輩が言う。
先輩が拒否するって意外です。
「今帰るとだな、家で待ち構えているやつとかいるんだよ」
拓磨が言う。
拓磨って意外ともてたんだ。
「僕、断りきれませんでした」
数々のチョコが見える紙袋を両手で抱えている慎司くん。
大変だね、慎司くん。
「女ってめんどくせぇ」
遼が言う。
度胸の据わった女性もいるもんだ。
みんなの意見にだんだんとチョコが渡せなくなってくる。
「あぁ、正直困る」
祐一先輩の駄目押し。
駄目だ、渡せない。
自然とドアのほうに下がってしまった。
「え……っと、そうなんだ。じゃぁ、私一人で帰るから…」
そう言うと、ドアノブに手をかけた。
ごめん、清乃ちゃん一緒にチョコ食べて、と心の中でつぶやく。
「ちょっと待て」
真弘先輩の声に振り向いた。
みんななんだか片手を前に出している?
「何ですか?」
「いや、お前からは何もないのかと思ってだな……」
拓磨が顔を赤くしながら言う。
「なんかこ~一つくらい甘いもんがくいて~な~なんてよ」
真弘先輩がいう。
「あの、珠紀先輩から戴けるのでしたら、僕一生大切にします」
慎司くんがいう。
「オイッさっさと出せ。お前からチョコの匂いがしてんだよ」
遼ったら。
「珠紀、……欲しい」
祐一先輩からのその一言で、一気に顔が赤くなる。
どんな顔をすればいいのか分からないまま、みんなに恐る恐る渡していく、祐一先輩のみ内緒のチョコレートとともに。
「よーーっし、さっそく戴くとするか!」
真弘先輩が包装を破り始めると、一斉にみんなまで破り始めた。
「え?え、え…………えーーーーーーーーっ!!」
軽くパニックになる!
だって、だって、みんなのチョコと祐一先輩のチョコは違うんだもの!
みんなも気がついたのか、一斉に祐一先輩の手に持つチョコに目がいった。
「なぁ?どうして祐一のだけハート型なんだ?」
そう、みんなのチョコは丸い型で、祐一先輩のチョコのみハート型。
だ、だって本命チョコだもん。みんなの視線が私に移る。
「う゛っ。」
視線に耐えきれなくなり、慌てて嘘をついた。
「ゆ、祐一先輩おめでとうございます!!当たりです」
「「「「「当たりぃ~」」」」」
目線を合わせられないまま、何度もうなずいた。
「そ、そういうのって面白いでしょ?」
納得いかないという視線が私をさす。
少し汗だくになりながらも、チョコを渡す目的を果たした私は、後ずさりをしながらバイバイっと手を振って屋上から逃げ出した。
な、なんとか誤魔化せたかな?
まだ熱い顔を手でパタパタと仰ぎながらも階段を下りる。
最後の階段を降りようとした時、一向に地に足がつかないことに気がついた。
―― 誰かに抱きかかえられている。
―― 恐る恐る振り返ると、それは祐一先輩だった。
「祐一先輩?」
確認すると、そっとおろしてもらった。
でも、離してはくれない
「珠紀………まだ当たったものを貰っていない」
さっきのチョコの件でのことを思い出し、顔が赤くなる。
「あ…当たりの商品ですか?」
そうだと頷かれる。突然の思い付きでいったあのセリフ。
当然そんなものは考えてはいなかった。
「あの、先輩は何がいいですか?」
私のセリフに少し驚く。
「俺が決めてもいいのか?」
赤い顔を見られないように、下を向きながら何度もうなずいた。
しばらく沈黙が訪れる。
その静寂な時間がとても長く感じ、また自分の心臓の音が先輩に聞こえないかと、少し焦った。
「珠紀」
先輩の声に顔をあげると、唇が落ちてきた。
何がなんだか分からず頭が真っ白になる。
やさしい口づけが、だんだんと熱く深くなって………やがて、私の中で甘さが広がった。
先輩が甘いのか。
私が甘いのか。
二人が一つに溶け合う。
☆
しばらくしてやっと唇を解放されると、私の耳元で囁いた。
―― 珠紀が欲しい ――
そう言うと、私の髪をやさしくなでおろし、愛おしそうに頬すりをする。
嬉しさと恥ずかしさと幸せで、涙が出た。
先輩を抱きしめることで、自分の気持ちを伝えた。
fin
とうとう、『緋色×カピバラさん』シリーズ最後になりました
気づいた方がいらっしゃると思いますが、ルート別になる人組
にしてみました♪
空パチありがとうございます励みになります!
スグカピさん:大人で落ち着いたカピバラさん(怒らすと一番怖い)
頭が良いので、なんでも器用にこなします。
実のところ…弱点は眼鏡です(笑)
リョカピさん:いつも怒っている雰囲気がありますが、本人そんなに怒ってません。
趣味は匂いを嗅ぐこと…?気に入ったら、くんくんっと嗅ぎまくってるかも
この子は、なかなか懐かないので手が掛かります(笑)
補足
忍者の拍手でも、コメント送れます(管理人のみ読めるように、なってます。)
コメント入れてくださったら、このブログにてお返事します
※つづきに、管理人の日常書いてみた。読みたい方のみ、どうぞ~☆
気づいた方がいらっしゃると思いますが、ルート別になる人組
にしてみました♪
空パチありがとうございます励みになります!
スグカピさん:大人で落ち着いたカピバラさん(怒らすと一番怖い)
頭が良いので、なんでも器用にこなします。
実のところ…弱点は眼鏡です(笑)
リョカピさん:いつも怒っている雰囲気がありますが、本人そんなに怒ってません。
趣味は匂いを嗅ぐこと…?気に入ったら、くんくんっと嗅ぎまくってるかも
この子は、なかなか懐かないので手が掛かります(笑)
補足
忍者の拍手でも、コメント送れます(管理人のみ読めるように、なってます。)
コメント入れてくださったら、このブログにてお返事します
※つづきに、管理人の日常書いてみた。読みたい方のみ、どうぞ~☆