今回は、エイプリルフール記念(?)で
『木もれ日ふわり』の管理人:けやきさんとコラボさせていただきました
※小説→けやきさん
※イラスト→私(あき 紗香奈)
実は二作品もコラボさせていただいたんです
この卓さんverと祐一先輩verです
どちらも違ったテイストなので、楽しめると思います!
どうぞ、お楽しみくださいm(_ _)m
************************************
「・・・・珠紀さん、すみません。実は私にはあなたにお話できていなかったことがあるのです」
穏やかな春休みの一日、私と卓さんは縁側でお茶を飲みながらくつろいでいた。
明るいお日さまの光と風をうけて、卓さんをすぐ横で感じて、ああ幸せ、なんて庭を眺めていた私に不意にかけられた言葉。
驚いて卓さんの顔を見上げると、先程までとはまったく違った悲しげな表情がそこにはあった。
「あの、話せなかったって、どうしてですか?」
そう私が訊くと、卓さんは瞳を伏せてしまった。
「もしもお話してしまったら、あなたに嫌われてしまうかもしれません」
「そんな、卓さんを嫌うなんてこと決してありません!ね、卓さん、よかったら話してもらえませんか?」
少し躊躇った後、卓さんはぽつりぽつりと話し始めた。
「珠紀さんは、私が大蛇コドノマエの力を受け継いでいることをもちろんご存知ですよね。覚醒すると、私の姿が変わることも」
それはもちろん知っている。とても力強く優しい、私の大好きな卓さんのもう一つの姿。
「実は、瞳の色が変わり髪が伸びるだけではないのです。その、蛇と同じように舌も・・・・」
え?
私の表情を読み取り、卓さんはため息をもらした。
「・・・・やはり気味が悪いですよね・・・・」
「そんな、そんなことないです!どんな姿だって私は卓さんのことが大好きです」
「本当に?」
「はい、本当に本当です」
「でしたら教えてくださいますか?そのような姿でもあなたは私を想っていてくださる、ということを」
私は力強く頷いた。絶対、卓さんに安心してもらうんだから。
「それでは、覚醒のために契りを」
はい?
契りって、えっとその・・・・口付けってこと、だよね?あの、それって今も必要だったかな・・・・
そんな事を考えているうちに、卓さんの顔が近づいてくる。
ど、どうしよう!
とりあえず、縁側には私たちしかいないし、だから、その、ええと。
「珠紀さんさえよろしければ、そのまま、私がどのように変わってしまうのか感じていただけるのですが」
卓さんの言葉が耳のすぐ横で聞こえる。
え、・・・・えええっ!
それって、あの、そういうことですか!?
私は思わずぎゅっと目をつぶって、頭の中には何だかいろんなことがぐるぐる回って、そのまま固まってしまった。
でも、そんな私の耳に次に入ってきたのは、く、く、と息が短く何度も漏れる音。
私を引き寄せている卓さんの腕は震えている。
あれ?
私が目を開けてみると、卓さんは肩を小刻みに震わせていて。
ええ~!わ、笑ってる!
「卓さん!もしかして、また私のことからかって遊んでいるんですか!?」
卓さんは実に楽しそうにくすくす笑いながら、悪戯な目をした。
「だって、今日が4月1日だと言い出したのは、珠紀さんですよ?」
そういえば、そんな話題をさっき出したけれど、こんなふうに実行に移すなんて!
「たしかにそうですけれど、でも、ひどいです!
私を試すようなことを言って、悲しい表情までしっかり作って・・・心配したじゃないですか!
もう、どきどきもさせられちゃって、ほんとにもう!!」
「すみません」
卓さんは笑うのを止めて、頭を下げた。
「でも嬉しかったんですよ。あなたにあのように真剣に言っていただけて。それで、つい、やりすぎてしまいました。申し訳ありません。許していただけますか?」
そういって眉をちょっと下げて、困ったような顔をして私を見る。
だめです、きらいです、って仕返しをしてしまおうかとも思ったのだけれども、うそでも嫌いなんて言いたくないし、おまけに、実は卓さんのそんな表情に私は弱かったりする。
それに、ほんの少しだけだけれど不安そうにしている気がしたから。
ああ、もうほんとに仕方がないんだから、卓さんは。
でも、そんなところも好きだったりするのだから、惚れたほうが負けって本当かも。
「わかりました。でも反省してくださいね」
「ありがとうございます」
いつものように柔らかく微笑んで、卓さんは改めて私の肩を引き寄せた。
でも、でも落ち着いてみると、やっぱり何だか悔しいな。
ううう、来年こそは私から上手にうそをついてみせるんだから。
これはリベンジするしかない!がんばれ私!!
思わず握りこぶしを作ってしまうと、頭の上から、ふ、と微かな笑い声が聞こえてきて、卓さんの腕の力がほんの少し強まった。
『木もれ日ふわり』の管理人:けやきさんとコラボさせていただきました
※小説→けやきさん
※イラスト→私(あき 紗香奈)
実は二作品もコラボさせていただいたんです
この卓さんverと祐一先輩verです
どちらも違ったテイストなので、楽しめると思います!
どうぞ、お楽しみくださいm(_ _)m
************************************
「・・・・珠紀さん、すみません。実は私にはあなたにお話できていなかったことがあるのです」
穏やかな春休みの一日、私と卓さんは縁側でお茶を飲みながらくつろいでいた。
明るいお日さまの光と風をうけて、卓さんをすぐ横で感じて、ああ幸せ、なんて庭を眺めていた私に不意にかけられた言葉。
驚いて卓さんの顔を見上げると、先程までとはまったく違った悲しげな表情がそこにはあった。
「あの、話せなかったって、どうしてですか?」
そう私が訊くと、卓さんは瞳を伏せてしまった。
「もしもお話してしまったら、あなたに嫌われてしまうかもしれません」
「そんな、卓さんを嫌うなんてこと決してありません!ね、卓さん、よかったら話してもらえませんか?」
少し躊躇った後、卓さんはぽつりぽつりと話し始めた。
「珠紀さんは、私が大蛇コドノマエの力を受け継いでいることをもちろんご存知ですよね。覚醒すると、私の姿が変わることも」
それはもちろん知っている。とても力強く優しい、私の大好きな卓さんのもう一つの姿。
「実は、瞳の色が変わり髪が伸びるだけではないのです。その、蛇と同じように舌も・・・・」
え?
私の表情を読み取り、卓さんはため息をもらした。
「・・・・やはり気味が悪いですよね・・・・」
「そんな、そんなことないです!どんな姿だって私は卓さんのことが大好きです」
「本当に?」
「はい、本当に本当です」
「でしたら教えてくださいますか?そのような姿でもあなたは私を想っていてくださる、ということを」
私は力強く頷いた。絶対、卓さんに安心してもらうんだから。
「それでは、覚醒のために契りを」
はい?
契りって、えっとその・・・・口付けってこと、だよね?あの、それって今も必要だったかな・・・・
そんな事を考えているうちに、卓さんの顔が近づいてくる。
ど、どうしよう!
とりあえず、縁側には私たちしかいないし、だから、その、ええと。
「珠紀さんさえよろしければ、そのまま、私がどのように変わってしまうのか感じていただけるのですが」
卓さんの言葉が耳のすぐ横で聞こえる。
え、・・・・えええっ!
それって、あの、そういうことですか!?
私は思わずぎゅっと目をつぶって、頭の中には何だかいろんなことがぐるぐる回って、そのまま固まってしまった。
でも、そんな私の耳に次に入ってきたのは、く、く、と息が短く何度も漏れる音。
私を引き寄せている卓さんの腕は震えている。
あれ?
私が目を開けてみると、卓さんは肩を小刻みに震わせていて。
ええ~!わ、笑ってる!
「卓さん!もしかして、また私のことからかって遊んでいるんですか!?」
卓さんは実に楽しそうにくすくす笑いながら、悪戯な目をした。
「だって、今日が4月1日だと言い出したのは、珠紀さんですよ?」
そういえば、そんな話題をさっき出したけれど、こんなふうに実行に移すなんて!
「たしかにそうですけれど、でも、ひどいです!
私を試すようなことを言って、悲しい表情までしっかり作って・・・心配したじゃないですか!
もう、どきどきもさせられちゃって、ほんとにもう!!」
「すみません」
卓さんは笑うのを止めて、頭を下げた。
「でも嬉しかったんですよ。あなたにあのように真剣に言っていただけて。それで、つい、やりすぎてしまいました。申し訳ありません。許していただけますか?」
そういって眉をちょっと下げて、困ったような顔をして私を見る。
だめです、きらいです、って仕返しをしてしまおうかとも思ったのだけれども、うそでも嫌いなんて言いたくないし、おまけに、実は卓さんのそんな表情に私は弱かったりする。
それに、ほんの少しだけだけれど不安そうにしている気がしたから。
ああ、もうほんとに仕方がないんだから、卓さんは。
でも、そんなところも好きだったりするのだから、惚れたほうが負けって本当かも。
「わかりました。でも反省してくださいね」
「ありがとうございます」
いつものように柔らかく微笑んで、卓さんは改めて私の肩を引き寄せた。
でも、でも落ち着いてみると、やっぱり何だか悔しいな。
ううう、来年こそは私から上手にうそをついてみせるんだから。
これはリベンジするしかない!がんばれ私!!
思わず握りこぶしを作ってしまうと、頭の上から、ふ、と微かな笑い声が聞こえてきて、卓さんの腕の力がほんの少し強まった。
今日は4月の始まりの日にぴったりのいいお天気で、絶好のピクニック日和。
それに春休みだから朝からずっと祐一先輩といられるし、さっき食べたお弁当のおいなりさんもおかずも我ながら成功したと思えるし。
私は鼻歌を歌いたくなるような気分でレジャーシートの上に座り、お日さまにあたりながら草の香りを楽しんでいた。
祐一先輩はすぐ近くで、やっぱり気持ちよさそうにうとうとしている。
ああ、春だな、4月がきて嬉しいな、なんて思ったところで、私はもうひとつ今日やりたかったことを思い出した。
えっと、静かに準備して。
先輩、きっと本当には寝ていないよね?
「あの、祐一先輩、実は私、新しい術を身につけたんです」
先輩は目を開けてこちらを見た。
「今試してみますから見てもらえますか?」
「ああ」
上手く出来ますように。
手のひらを一度先輩に見せて、こっそり仕込んで。
そして口の中で適当に何か唱えて。・・・・・えいっ!
「ほう、すごいな」
祐一先輩が感心したような声をあげてくれる。
私の手のひらには、無事、小さなキャンディが2つ乗っていた。
やった、成功!
4月1日に会えることになってから、エイプリルフールでなにかやってみたいなって思っていた。
私が思いついたのが、この前覚えた手品を新しい術ですって話すうそ。
祐一先輩ならすぐわかるだろうし、ちょっとは笑ってくれるよね?
実はエイプリルフールでした、と口を開きかけたそのとき、
「次はいなりずしを出してくれないか?」
え?
「新しい術、見事だった。よく修行したな。俺としては、次はぜひいなりずしを出してほしい」
ええ~っ!もしかして先輩、信じちゃったの!?
どうしよう、そんな、おいなりさんなんて出せないもの。
「ああ、先程たくさん美味いいなりずしを食べさせてもらったからな。一つでいい」
さらに追い討ちをかけるように真面目な顔で言われてしまって。
あたふたとしている私を見て、先輩はやがて、ふ、と笑い出した。ほころぶように広がる笑顔。金の瞳がきらめいている。
「もう~、祐一先輩ったら!やっぱりわかっていたんですね」
「すまない。珠紀の反応が可愛らしかったから、つい乗ってしまった」
先輩の顔を見て、私も思わず笑ってしまった。
ちょっと焦ったけれども、先輩が楽しそうに笑ってくれたから、まあいいかな。
「実は、俺も新しい術を身につけた。見てくれるか?」
ひとしきり笑った後で先輩がそう言い出した。
なんだろう、やっぱりエイプリルフールかな、それとも本当なのかな。
お願いします、と私が言うと、先輩は立ち上がり背筋を伸ばした。
手を差し伸べられたので、私も立ち上がりちょっと緊張する。
先輩の表情からは何も読めないけれど、これは本当なのかも。
先輩が一歩私に近付いた。
と思ったら、先輩の顔がもっと近付いてきて、私の唇に何か温かいものが一瞬触れて。
呆然としてしまった私を、先輩はやわらかな笑顔で満足そうに見ている。
今のって、あの!
「珠紀を驚かす新しい術だ」
やっと我に返った私は頬が熱くなってしまった。
「せ、先輩、今のどのあたりが術なんですか!?」
「今日は4月1日だからな。
新しい、ということと、術、ということ、2つ嘘をついたから俺の勝ちだ」
そもそも勝ち負けなんてあるんですか、と言おうとした私を、先輩は引き寄せて抱きしめて。
褒美をもらうぞ、という囁きと共に、もう一度、今度はしっかりとした口付けが私の唇に降りてきた。
(終)
それに春休みだから朝からずっと祐一先輩といられるし、さっき食べたお弁当のおいなりさんもおかずも我ながら成功したと思えるし。
私は鼻歌を歌いたくなるような気分でレジャーシートの上に座り、お日さまにあたりながら草の香りを楽しんでいた。
祐一先輩はすぐ近くで、やっぱり気持ちよさそうにうとうとしている。
ああ、春だな、4月がきて嬉しいな、なんて思ったところで、私はもうひとつ今日やりたかったことを思い出した。
えっと、静かに準備して。
先輩、きっと本当には寝ていないよね?
「あの、祐一先輩、実は私、新しい術を身につけたんです」
先輩は目を開けてこちらを見た。
「今試してみますから見てもらえますか?」
「ああ」
上手く出来ますように。
手のひらを一度先輩に見せて、こっそり仕込んで。
そして口の中で適当に何か唱えて。・・・・・えいっ!
「ほう、すごいな」
祐一先輩が感心したような声をあげてくれる。
私の手のひらには、無事、小さなキャンディが2つ乗っていた。
やった、成功!
4月1日に会えることになってから、エイプリルフールでなにかやってみたいなって思っていた。
私が思いついたのが、この前覚えた手品を新しい術ですって話すうそ。
祐一先輩ならすぐわかるだろうし、ちょっとは笑ってくれるよね?
実はエイプリルフールでした、と口を開きかけたそのとき、
「次はいなりずしを出してくれないか?」
え?
「新しい術、見事だった。よく修行したな。俺としては、次はぜひいなりずしを出してほしい」
ええ~っ!もしかして先輩、信じちゃったの!?
どうしよう、そんな、おいなりさんなんて出せないもの。
「ああ、先程たくさん美味いいなりずしを食べさせてもらったからな。一つでいい」
さらに追い討ちをかけるように真面目な顔で言われてしまって。
あたふたとしている私を見て、先輩はやがて、ふ、と笑い出した。ほころぶように広がる笑顔。金の瞳がきらめいている。
「もう~、祐一先輩ったら!やっぱりわかっていたんですね」
「すまない。珠紀の反応が可愛らしかったから、つい乗ってしまった」
先輩の顔を見て、私も思わず笑ってしまった。
ちょっと焦ったけれども、先輩が楽しそうに笑ってくれたから、まあいいかな。
「実は、俺も新しい術を身につけた。見てくれるか?」
ひとしきり笑った後で先輩がそう言い出した。
なんだろう、やっぱりエイプリルフールかな、それとも本当なのかな。
お願いします、と私が言うと、先輩は立ち上がり背筋を伸ばした。
手を差し伸べられたので、私も立ち上がりちょっと緊張する。
先輩の表情からは何も読めないけれど、これは本当なのかも。
先輩が一歩私に近付いた。
と思ったら、先輩の顔がもっと近付いてきて、私の唇に何か温かいものが一瞬触れて。
呆然としてしまった私を、先輩はやわらかな笑顔で満足そうに見ている。
今のって、あの!
「珠紀を驚かす新しい術だ」
やっと我に返った私は頬が熱くなってしまった。
「せ、先輩、今のどのあたりが術なんですか!?」
「今日は4月1日だからな。
新しい、ということと、術、ということ、2つ嘘をついたから俺の勝ちだ」
そもそも勝ち負けなんてあるんですか、と言おうとした私を、先輩は引き寄せて抱きしめて。
褒美をもらうぞ、という囁きと共に、もう一度、今度はしっかりとした口付けが私の唇に降りてきた。
(終)